BPM150

人生に疲れた院生が、その時書きたいことを書いていく

劇場から出たら「倫理観・・・」と呟く人が絶えなかった『メイドインアビス』

絶賛公開中の『メイドインアビス-深き魂の黎明-』を見てきた。

何を言ってもネタバレになってしまうので、多くは語れけど思ったことをまとめます・・・

 

www.youtube.com

 

 探窟家を目指す主人公リコとロボットのレグは、己の目的を果たすため、人類最後の秘境と呼ばれる大穴アビスの深層を目指す。アビスの世界観は『風の谷のナウシカ』と似ており、「王蟲」みたいな未知の生物がゴロゴロ出てくる。大穴アビスは八層からなる縦穴で、下に行けば行くほど街に戻ることは困難になる。なぜなら、下底部から上へ上がるにあたって「アビスの呪い」という上昇負荷がかかってしまう(これがやばい)。各層によって負荷の質は異なり、頭痛や吐き気、幻覚、穴という穴からの出血、平衡感覚の喪失などなど(本当にやばい)。冒険に出る際に代償はつきものであるが、探窟家たちはまだ見ぬ深層(真相)を夢見てアビスに立ち向かっていく。

 

 劇場版では、リコとレグ、そして深層四層で仲間になったナナチと共にアビスの深層五層に向かう場面が描かれる。海賊王を目指したり、玉集めて願い叶えてもらったりする冒険譚と比べて、PVを見てもらったらわかるけど、これ本当に冒険?って三度見くらいする。それくらい五層の冒険は精神的にエグられる。エグられるとわかっていながら見てしまうのはなぜか。

 

 一つ目に、隠の部分の描き方が細かいからこそ、ふとした瞬間に出てくる陽のシーンがとてつもなく心を乱すから。基本的に全編を通して暗いですし、初頭効果のせいもあり暗く重たい気持ちを抱きながら映画を見続ける事になる。隠にとっても引きずられる・・・。そんな精神状態の中で、光に向かって階段を登るシーンや、仲睦まじく冒険について語るシーンなどが絶妙なタイミングでぶっ込まれることで、「いや・・・今じゃないだろ・・・」という気持ちなる。陽である筈なのに絶望のみが残る虚無感。明るいシーンに心から喜べないこの矛盾感がクセになってしまうのかもしれない。

 

 二つ目に、どうにもならない理不尽さすらも凌駕する好奇心にドギマギするから。正直、こどもに背負わせるには理不尽すぎることがたくさん起こる(五層に限らず)。そもそも、「アビスの呪い」によって深層まで行けば行くほど戻ることは難しい。難しいというか、死ぬよな。そんな状況下でも、リコは真相を知るために立ち向かっていく。血が出ようが、幻覚が見えようが進む。ここで重要なのは、己の好奇心のためには犠牲は厭わないメンタルである。強靭な精神力とかでは片付けられない・・・。すげえな・・・まじで・・・魂輝いてんな・・・ってなる(劇場版でチェック!)。その輝きは、多分、何があってもただひたすら「知りたい」っていう好奇心が由来だと思う。共感できるかどうかは人によると思うけど、私は少なからずドギマギしちゃう。リコの好奇心がどう影響するのか気になってしまうからこそこの作品に惹かれてしまうのではないだろうか。

 

 人によって『メイドインアビス-深き魂の黎明-』に惹かれてしまう理由は異なると思うけど、初見で私が思ったのはこの二つだった。

 

 映画見終わって、ほとんどのお客さんが「倫理観どこいった・・・」って言ってる人が多かった。まあ確かにやばいんだけど、メイドインアビスに倫理観説き始めたらキリがないと思う。私の中では、倫理観に疑問を抱くよりも、極限状態の中で楽しさを見い出すことができるリコ凄いなという思いの方が強かった。こんなにも悲惨な仕打ちを受けたとしても、街にいる時より魂輝いてるリコが凄い。魂の輝きが見たいおじさんになってしまう・・・。